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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)2936号 判決 1954年2月02日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人本人の上告趣意(後記)は、事実誤認の主張であり刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人大西保の上告趣意(後記)について。

所論第一点は、食糧管理法が憲法違反であると主張するけれども、然らざることは当裁判所の判例の趣旨とするところであるから採用することはできない。(昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決、集二巻一〇号一二三五頁、昭和二二年(れ)第三四二号同二三年一二月八日大法廷判決、集二巻一三号一七一一頁、昭和二四年新(れ)第三二二号同二五年七月一三日第一小法廷判決、集四巻七号一三三五頁参照)。

次に所論第二点は、法令違反の主張であって刑訴四〇五条の上告適法の理由に当らない。〔昭和二七年五月三一日農林運輸省令第二号により同年六月一日以後小麦の移動禁止が解かれたことは所論のとおりである。しかし小麦が食糧管理法施行規則にいわゆる主要食糧から除外されても既にその前に成立した主要食糧(小麦)輸送罪に対する刑が廃止されたものということのできないことは当裁判所の従来の判例の趣旨とするところであって、今これを変更する必要がない。(昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日大法廷判決、集四巻一〇号一九七二頁、昭和二四年(れ)第二四七一号同二六年三月二二日第一小法廷判決、集五巻四号六一三頁、参照)〕

よって刑訴四〇八条、一八一条により主文のとおり判決する。

右は、裁判官井上登同小林俊三の少数意見を除く裁判官一致の意見である。

裁判官井上登同小林俊三の意見は、被告人の第一審判決第二の行為(小麦不法輸送)は、昭和二七年五月三一日食糧管理法施行規則二九条のその後の改正により禁止を解かれて処罰されないこととなった結果、犯行後にいわゆる刑の廃止があった場合に当ると解すべく、論旨はこの点において理由があるから、詐欺の点を除き食糧管理法違反については、被告人を免訴すべきものであるというのである。なお裁判官井上登の意見の詳細は、昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日大法廷判決において述べたところと同趣旨であるからこれを引用する。(集四巻一〇号一九八九頁)

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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